事務所でのお茶の時間になにがきっかけだったか忘れたが、スタッフと「絵しりとり」をやったことがある。
しりとりの言葉を絵(単なるイタズラ書き)で描いていくという単純なものだったが、これが結構むずかしく、私が描いたものはいちいち説明しなければならなかった。
例えば、「リンゴ」のしりとりに「ゴマ」を描いたが誰にもわかってもらえず「ゴマ」と説明したら爆笑され、「イカ」のあとに「カヌー」を描いたら「バナナはダメです。カから始まるものです!」と言われ「これはカヌー」と説明したら超爆笑された。
まぁ、お茶の時間が盛り上がって良かったが、自分は少々凹み気味になった。
イラスト塾
これが一つのきっかけとなり「そうだ!絵を習いに行こう。」と決め、イラスト塾に通い始めて12年になる。
塾長の山内三貴子先生の作品は、高島屋名古屋店オープンの時にも採用され,落合恵子さんのエッセイ挿絵や、帝国劇場のミュージカルポスターのイラストや、サントリーのシルキーワイン缶のイラストで目にすることができる。内面に強さを秘めた品のある女性を水彩で描く作品はInternational Watercolor Competition(Galleria Esdé/イタリア)Women in Watercolor(アメリカ)ファイナリストとして世界でも認められている。
そんなに素晴らしい先生とは知らず入塾を希望し、無謀というか、失礼というか・・・塾生として劣等生として12年も末席に座っている。
イタズラ書きの「ゴマ」も「カヌー」も言葉で説明しなければ理解してもらえないほどの腕しか持っていない私は、いつも失敗を恐れ、線を描くにも色を選ぶにも躊躇ばかりで、筆が進まない。
そんな時、山内先生の軽やかなひと言「やってみなけりゃわからない。失敗したらやり直せばいいの。失敗だと思ってもそこから思いがけない作品が生まれることもあるのよ!」
失敗は成功のタネ
本当にそのとおり!これは私がいつもスタッフや研修する時に言っている言葉である。失敗を山ほど経験している自分だからこそ本気で言っている「やってみなければわからない。失敗は成功のタネ。」っていうフレーズと同じだ。
今日、スタッフの一人が「お話しがあります・・・」と自分のミスを報告に来た。
内容を聞いてみると確かに失敗はしているが、自分自身でその分析はできていた。そして彼女が、その際、現場で発した機転の利く言葉がその失敗をカバーしていた。
今までは失敗を恐れ、とっさのひと言が言えなかったばかりに、キズを広げることが多かったが、今回は違っていた。今までの失敗の積み重ねの中から成功と自信のタネが芽生えた瞬間だったと思う。
再びイラスト塾
「上手く描けない。下手くそ。」と自分に毒づきながら、なぜ12年もイラスト塾に通っているのかというと、仕事とは違う世界に逃避できるから。そして堂々と(?)失敗しても
「やってみなけりゃわからない。」
という軽やかな言葉がフォローしてくれるからだと思う。そして、仕事上、自分で誰かに言うことはあっても、もう誰かから言われることがなくなったこの言葉を再確認したいからかも知れない。
内面の強さを秘めた品のある女性を描く山内先生の指導を受けながら私が描くものは、品のある(?)オランウータンや犬、ねこ、動物たち。
「やってみなけりゃわからない」
これは、自分にも、誰かにも、どんなときにでも使える背中を押す言葉。
「やってみなけりゃわからない」
この言葉のあとには、あたらしい何かが始まるはず。
「やってみなけりゃわからない」