ラジオは高齢者が聞くものというイメージが定着していたが、コロナ禍以降、ラジオリスナー、特に若いリスナーが増え続けている。インターネットを使って全国のラジオ番組が聞けるラジコの人気が高まり、スマホさえあればどこでもリスナーになれる。2月18日東京ドームではオードリーのオールナイトニッポンin東京ドームがありドームに53,000人映画館でのライブビューイング、生配信などを合わせると16万人が参加したという。言葉のプロたちによるラジオ番組仕立ての企画をSNSも上手く活用しこれほどの集客が可能になったということは、確実にラジオの時代がやって来たと言える。
ラジオ復権の三要素
東洋経済ONLINEの記事によると、ラジオ復権に導いた3つの要素は、*テレビは状況を伝えることが中心で制約も多く、自分のほうを向いているようには思えない。*SNSは簡単に人とつながれるが、感情がむき出しになりがちで疲弊する。*ラジオはメディアとしての適度なモラルが保証され、自分の心に接触して語りかけてくれている気がする。
若者がこの本音と節度と距離感から生まれる信頼関係が、しゃべり手とリスナーとで共有されていることがラジオの良さだと気づき始めたとあった。
ラジオと言葉
ラジオは、ボキャブラリーの豊かさが勝負どころでもあり、魅力でもある。
テレビカメラで映せばすぐわかる情景も、ラジオでは言葉で伝えるしかない(効果としての音は聞かせられるが)。ボキャブラリーの豊かさが勝負である。
深夜のトーク番組も人気で、歌手やお笑いタレントのバラエティーに富んだ言葉のやり取りを聞く楽しさが再認識されている。若者たちがラジオから言葉の面白さを再認識してくれたら、コミュ力とボキャ力が上がって、会話がどんどん楽しくなると思う。
ラジオで食レポ
前回食レポと言葉について書いたが、ラジオの食レポはかなりハードルが高い。
どのような器に入り、どのような形状で、香りはどうなのかなど、自分の持つボキャブラリーと感性をフル回転させて伝えなければ食レポにならない。どのように美味しいのか、どのように柔らかいのか、どのような色合いなのか、「甘じょっぱい」と言っている場合ではない。すべて言葉で言い表すことになるので、ボキャブラリーが貧しいと惨めな結果が待っている。逆に、言葉の力を発揮した食レポはリスナーの想像力を刺激して大きな効果をもたらす。この想像力に結び付ける言葉のチョイスがポイントとなる。
ラジオで絵本
ラジオで月~金の生番組を担当していた時、毎週火曜日は絵本を1冊ずつ紹介していた。絵本専門店メルヘンハウスの三輪哲さんとトークしながらの絵本紹介だったが、テレビなら簡単に見せることができる絵本もラジオでは言葉のみ。自分は少々不安もあったが、三輪さんは「それがいい。話す言葉から想像力を掻き立てられるのがいい。」と語り、薦めたい絵本を二人でトークしながら紹介していった。毎週その絵本をプレゼントしていたが、応募はがきには「どんな絵本か想像するのが楽しかった。子どもに読ませたい。」と書かれていることも多く、文字通り想像力を掻き立てられたリスナーの反応が、はがきの山に表れていた。結局120冊近く紹介したが、今振り返ってみると、この経験は言葉で伝える幅を広げ、仕事を続けていく自信につながっている。
ラジオの時代がやって来たことは間違いないと思う。
聞きながら言葉のおもしろさに目覚める人が多くなりますように。