最近、出前授業を依頼されることが多い。専門的な仕事をしている大人から話を聞くという授業で、証券会社、美容師、プログラマーなど幅広い職種から中学生たちが興味を持った職業を選んでクラスごとに授業を受ける。弊社はアナウンサー・レポーター・インタビュアーという仕事と、言葉とコミュニケーションについての授業を受け持っています。
授業は、「滑舌」の練習からスタート。しゃべる仕事で大切なことは、言葉をはっきり話すこと、言葉がきちんと伝わるように話すためには「滑舌」が一番大切ということを説明します。と言っても、冒頭から「ア・エ・イ・ウ・エ・オ・ア・オ」のような正統派滑舌エクササイズでは退屈なので、楽しみながら、しかも効果的な滑舌練習・早口言葉に挑戦してもらうことにしています。
生麦生米生卵
早口言葉の定番と言えば「生麦生米生卵」「東京特許許可局」「隣の客はよく柿食う客だ」などを思い浮かべる人も多いと思いますが、これらの早口言葉はもう古く、化石状態。最近は、脳トレ用の早口言葉の本も多く出版され、YouTubeでは早口芸人のオリジナル早口言葉がウケたりと、早口言葉は新しい時代を迎えています。
炙りカルビ
授業では、生徒たちに早口言葉に挑戦してもらいますが、クラスの中には講師を困らせようと虎視眈々と「困らせるネタ」を探している生徒もいます。先日の授業では一人の生徒が手をあげました。「先生、炙りカルビを10回続けて言えますか?」彼はクラス全員に渡した早口言葉リストの中から「講師を困らせるネタ」を見つけたようです。その授業を担当した講師にとっては朝飯前の「炙りカルビ」!スラスラッと10回噛まずに言うことができました。その生徒は「カッケー」と思ったのか、そのあとの授業は茶化すこともなく、まじめに取り組んだようです。
さぁ!炙りカルビ・炙りカルビ・炙りカルビ 10回続けて言ってみましょう(*_*)
学校 急遽 休校
ウケる早口言葉をもう一つ。
「学校 急遽 休校」 これは言葉と舌が捻じれていく感じが続いてむずかしいのですが、生徒たちは遊び感覚で面白がって挑戦します。
早口言葉の効用
早口言葉は、一度で完璧に言えることはほとんどありません。たいてい失敗します。でも、それでいいのです。その失敗が面白く、ちょっとシャクに触って繰り返し練習することになります。そのことが結局、滑舌のトレーニングになり、舌の滑らかな動きが実感できて、とても良い効果があります。
「お・わ・よ・お・ご・ら・い・ま・す」が、「お・は・よ・う・ご・ざ・い・ま・す」 ほらっ!ちゃんと言えた!
早口言葉の効用には、もう一つあります。早口言葉は言い間違えたとしても笑いに変えることができます。しかも、それは周りの人たちを巻き込んだ無邪気で前向きな笑いです。失敗を気にせず、楽しく失敗を受け入れられる点でも、早口言葉はポジティブです。
出前授業でも、授業冒頭で早口言葉滑舌練習をすることで、生徒全員が上手く言えない早口言葉に無邪気に笑い、教室の空気から無駄な緊張感が消えていきます。
早口
最近の日本人は早口になったと言われています。
1950年代のニュースアナウンサーの話速は1分間に320字でしたが、令和には1分間に380~400字で25%もスピードアップしています。耳慣れしてしまったので違和感はありませんけどね。
早口になったのは、YouTubeやTikTokなどでテンポの早い会話が普通になっていて、それらを見聞きしているうちにマネしてしまうミラーニューロンを含む模倣神経系が影響しているようです。
早口言葉と早口
早口言葉は、音の切り替えや発音の正確さがポイント、滑舌・舌の運動神経・エクササイズです。
いかに早く、特定の文章を正確に、リズムよく発音するかという言語ゲームが早口言葉。
早口は、単に、普段から話すスピードが早い人。
早口の人が、滑舌・舌の運動神経が優れているとは限らないです。
必ずしも、早口の人が、早口言葉を得意とするというわけではなさそうです。
早口言葉エクササイズ
アナウンサーや声優など、話すことを仕事にしている人たちは、日頃から「滑舌トレーニング」として早口言葉を練習しています。
早口言葉は、繰り返し練習するほど上達が実感できる、とても良い発声エクササイズです。
言葉をクリアに届ける力は、どんな場面でも大きな強みになります。
お気に入りの早口言葉を見つけて、秘密練習いかがですか?